あつみに晩秋を告げる風物詩、温海かぶ

朝晩の寒さに近づく冬を想うこのごろ。
今年もまた「温海かぶ」の季節がやってきます。

「温海かぶ」は山形県庄内地方の伝統野菜で、
江戸時代から栽培されている品種です。
皮は赤紫色で中は白く扁平形。
10cmほどの中型の赤カブで歯ごたえがあり、
漬物にするとコリコリとした食感が楽しめます。

「温海かぶ」の収穫は例年10月中旬~11月中旬頃。
晩秋から冬にかけて店頭に並ぶ
「温海かぶ」の甘酢漬けは庄内地方の特産品として、
江戸時代には幕府へも献上されていました。

栽培方法は、一般の畑で作られるものと、
昔ながらの焼畑自然農法でつくられるものがあり、
旧温海町の一霞地区の山間部では今なお、400年前から伝わる
この焼畑農法で「温海かぶ」が栽培されています。

木々を伐採した斜度30度程もある急斜面を山焼きし、
手作業による間引きや草取りをしてつくられる「温海かぶ」は、
農薬も化学肥料も使用しない自然栽培。
見た目の肌荒れがあるものの、香りや食感に優れています。

山に囲まれた一霞の立地条件と、
独特の栽培法でつくられてきた「温海かぶ」は、
他の地区で栽培されたり、焼畑以外の畑で作ると
形や品質に変化がでたり、化学肥料を施すと肉質や色が
品種本来の特性を発揮しないことがあります。

焼畑による自然農法は重労働のため、
生産者の高齢化が進んだ現代では、
生産量が減っているとても貴重なかぶです。

ちなみに焼畑農法は土地を休ませる期間が必要なため、
同じ場所で「温海かぶ」が栽培されるのは数年に一度だけ。
さらに、他の種と交じらないよう、温海かぶ以外の
アブラナ科の作物は栽培しない努力が受け継がれています。
また、かぶを収穫した後には、杉の植栽が行われます。

伝統を守り、ふるさとの本物の美味しさを守る、
頑固なまでのこだわりが、「温海かぶ」には込められています。

パリパリした心地よい歯ごたえと甘みの中に
ほんのりと苦味を感じる「温海かぶ」の甘酢漬は、
11月半ば頃から当館の売店にも並びます。

庄内の冬に欠かせない彩り華やかな自慢の伝統食をぜひ、
お楽しみいただけたら何よりです。

 

画像参照:
食の都 庄内(https://syokunomiyakoshounai.com/)
食文化想像都市 鶴岡(https://www.creative-tsuruoka.jp/)